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食べるということ

きょうは、お弁当作りはお休み。
明日も、有休頂いているのでお弁当は無しです。


’私達はどちらかというと、食器を買うよりも身につけるものを買う。
 「衣食住」という言葉があるように、日本人はまず衣のおしゃれをして食は次である。
 すてきな服を着ながら一山いくらで買った茶わんでわびしい食卓に向うよりも、
 私は質素な姿をしても、しゃれた食器でおいしいものを食べるほうが好きだ。
 いつも身につけている服装はその人の趣味、その人の人となりを現わすから、
 勿論大切にしなくてはならない。
 しかし毎日の食事もそれと同じである。
 美味な心を書いたブリヤ・サバランは
 「何を食べているかを知らせてくれれば、その人の性格を当てる事が出来る」
 と言ったそうだ’

故・石井好子著「バタをひとさじ、玉子を3コ」より


この文章を読んだときに、わたしは衣食どっちを重視するだろうと考えてみたけど...考えるまでもない。「食」だなと思った。

ウチの母は、食事を上手に作る人だ。18歳で家を出るまで、母の料理で「不味い」って思ったものがひとつもなかった。
今も時々送ってくれるおそうざいがとてもおいしいし、新しい料理に日々挑戦したりする。帰省するたびにマイブームな料理を教えてくれる。テレビの料理番組のレシピをそのとおりに作ろうなどと考えることはあまり無く、自分なりの味にアレンジするにはどうしたらいいだろうかと考えながら番組を観るのだそうだ。例えばレシピの材料を生クリームを牛乳に変えたり、バルサミコ酢を黒酢にしてみたり。
そして何でも手作りする。昔はパンを焼くために小麦粉はいつも25キロ入りのを近所のパン屋さんから譲ってもらっていたし、おやつに焼くシュークリームはだいたい一度にどーんと50個くらい焼いて、その日の気分でアイスクリームだのカスタードだの好きなのを挟んで食べさせてくれた。もちろんアイスもカスタードもお手製で。
マヨネーズも手作りだった。 最近は、味噌まで作るようになった。それを譲ってもらっているおかげで、わたしは東京に出てきてから一度も市販の味噌を買ったことがない。

その母の影響をがっつり受けていて、わたしも食生活だけは大切にしている。どんなに残業で遅く帰っても、又どんなに簡単なごはんでも、ランチョンマットを敷いて、ごはんとおかずをお皿にならべて椅子に座ってゆっくり食事しないと、一日が終わる気がしない。そして3食ばっちり食べる。朝ごはん抜きなどありえない。ドレッシングや焼肉のタレなどは毎回自分で作る。市販品は買わない。といっても適当に思いつくままに混ぜるだけなのだけど、おいしいし、自由で楽しい気分になる。そういう習慣を身につけさせてくれた母にはとても感謝している。

「食欲がある」というのは、健康の証。元気が無ければ食欲だって落ちてしまうし、食事なんかよりも気掛かりな事柄のほうに思いが向いていくのは当然のこと。だから食欲が落ちたときは、何が気になるのかを考える。自分の心身のどこが落ち込んでいるのかを。どうにもならないときは、とりあえず食べたいものを少し口にしてみる。甘いものとか、さくっとした軽い食感のものとか、そのときの気分で(ここでお酒に走ってみたいとこだけど、わたしはお酒が飲めない)。そうすると意外とふと肩の力が抜けて、気になってたことも大して気にならなくなったりする。食べたいものを食べる行為は、時に偉大だ。

何かおいしいものを頂くときは、誰かと一緒に食べるのがいい。そうすると美味しさも増す。それはきっと心に深く残る出来事となり、またこの人と楽しくておいしい時間を過ごしたいなという思いが増す。あのとき食べたあれがおいしかったよね、っていう共通の思い出は、やっぱり特別なものだ。
贅沢な食材を使った食事なんて、毎日はいらない。家で食べるものは、安くて、栄養が摂れて、季節感が感じられて、身体が温まれば十分。
「おいしい」という味覚は、例えば収穫したばかりの野菜のようなシンプルで混じりけのないものをかじったときに1番強く感じられるように、研ぎ澄ませておきたい。なかなか難しいのだけれども。

死ぬ前に何を食べておきたい?という質問に答えるなら、やっぱりパンかな。パンてどうしてこんなに心がトキメクんだろう。幼稚園か小学校の頃に「誕生日に何食べたい?」と母に聞かれて「パン!」と答えたら、パンを山ほど焼いてくれたこともあった(笑)。東京には、作り手の意思や遊び心を感じさせてくれるようなパン屋さんが多くてうれしい。

もう何年も前、夏の暑い日の夜、桃とヨーグルトと氷をミキサーにかけて作った母お手製のスムージーを父は「おいしいなあ」と言って飲んだそうだ。
その次の日の朝、父は亡くなった。
「おいしいなあ」が、父が発した最後の言葉だった。
やっぱりわたしは、この父と母のもとに生まれた、生粋の食いしん坊なのだと思う。


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Commented by beretdiary-plus at 2014-09-12 08:41
junkoさんの文章を読んで、朝からジ〜ンと温かな気持ちになりました。

お母様もお料理上手なのですね^^
それがjunkoさんにもしっかりと受け継がれていて素晴らしいです。
衣食住、どれも大切に暮らしたいとは思いますが、
私もたぶん一番は"食”かもしれません。
直売所で新鮮な野菜を見つけた時や、どの器に盛ろうかなと
考えている時がとても楽しいです。(ワンパターンですが・・・笑)

junkoさんの食を大切にする気持ち、毎日のお弁当からも
すごく伝わってきてますよ〜♡
Commented by にゃおにゃん at 2014-09-12 14:52 x
すごく良い文章だな。とじわっと来ました。思うことを言葉にすることそれこそが他人に通じることだと感じました。
食に対する考え方、私も似ているところがあるかもしれません。一人も良いけど誰かと食事するのはいいですね。割と出張が多い夫は私のお弁当を食べるとホッとするんだそうです。体調が悪い時は作らないけどそういわれると俄然やる気になります。お惣菜も冷凍食品も買わないので簡単なものだけ詰めるのですが、それでもごちそうとなれば嬉しいものです。
ちなみにうちの母は働く母、食事は大雑把で作るもあまり好きではなさそう。。。私の味は祖母譲りな感じがいたします。
Commented by じゅんちゃん at 2014-09-12 16:04 x
とてもすてきな文章でした。
junkoさんの丁ねいな暮らしぶりは、
素晴らしいお母さまに育てられて、
培われたんだなーと納得しました。

私の亡き母は、いつもあたたかいごはんを作ってくれました。
私を食いしん坊に育ててくれた(笑)、料理上手な母に感謝。
junkoさんの文章を読んで、母のことを思い出しています。
ありがとうございました。
じゅんちゃん(順子)
Commented by junko02010201 at 2014-09-13 09:56
beretさんへ

衣食住の中でなら、やっぱり大切なのは食ですよね!
beretさんは、そうおっしゃるんじゃないかなって思ってました^^

そうなんですー、母はお料理上手な人。でもわたしは料理は好きだし苦ではないけれど、上手でも得意でもないです。趣味ではあるけど特技ではない(笑)
お弁当の写真を撮ることで、日々の反省につなげられればと思ってブログを始めたくらいで・・・
(ちなみに母へお弁当の写真を見せたら「豆類と小魚が足りない」と直球でダメ出しされました~)

>直売所で新鮮な野菜を見つけた時や、どの器に盛ろうかなと
考えている時がとても楽しいです

うんうん^^ 楽しいですよね~。食材みると、何と合わせてどう調理しようかと考えてわくわくしてきます♪ 
beretさんの丁寧な暮らしぶりにはわたしとてもかないませんが、少しでも近づけるようになりたいなあ☆
Commented by junko02010201 at 2014-09-13 10:10
にゃおにゃんさんへ

ご主人がお弁当をそんなふうに褒めて下さるなんて、素敵~☆
お弁当を作るうえで、「ほっとする」という言葉は、最高のモチベーションアップにつながりますよね。わたしは誰かのために作ることはあまり無いので、ほめてもらえるのはうらやましいなあ^^

にゃおにゃんさんのお料理のセンスの良さは、おばあさまから受け継いでいらっしゃるんですね☆
うちの祖母は今年100歳で病気知らず。お料理上手な人という印象は無いんですが、ほどほどに運動をし、いつも畑でとれた新鮮なお野菜を食べていますね。若々しさをいつまでも保つ祖母を尊敬しています。
Commented by junko02010201 at 2014-09-13 10:25
じゅんちゃんさんへ

食いしん坊に育ててくれたじゅんちゃんさんのお母さま、きっと優しくて愛にあふれたかたなのでしょう。家庭料理を上手に作る人に、嫌な人いませんよね。
お料理上手なお母さまとの思い出は、宝物ですね^^

わたし全然丁寧な暮らしぶりじゃないんですよ~苦笑
けっこういろんなことがいい加減で、諦めの早い性格です^^;
じゅんちゃんさんには全然かないませんー!
同じジュンコという名前(漢字は違うけども)、偶然ですね^^ わたしも母から「じゅんちゃん」って呼ばれてます笑
Commented by uranoie at 2014-09-14 09:43 x
素敵なエッセイに、ぐいぐい引き込まれて読みました。
日曜日の朝に、こんな素敵なエッセイが読めるなんて、今日の私はツイてるわ。
登場する石井好子さんの著書も読みたくなって、たった今、アマゾンで注文してきましたヨ(笑)。
Commented by junko02010201 at 2014-09-15 17:27
uranoieさんへ

はじめまして♪ わあ、嬉しいことばをいただきまして、ありがとうございます。
石井好子さんの本、気に入って頂けるとわたしもうれしいです。
同じ石井さんの「巴里の空の下 オムレツのにおいは流れる」という本も好きです。ぜひそちらも^^ 昭和38年に書かれたのですが、いまのわたしたちがやっとふつうに入手して食べているものを当時既に食べていらしたことに衝撃です(チーズフォンデュやドリアンなど)。その本のあとがきに「わたしのおいしいと思うものは、銀のお盆にのったしゃれた高価な料理ではなく、家庭的な温かい湯気のたつ料理だ」と書かれていて、共感しました。

また何か共感しあえるものがありましたら、コメント残して頂けるとわたしとてもうれしいです♪ ありがとうございました!
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by junko02010201 | 2014-09-11 23:55 | ちょっとつぶやき | Comments(8)